私たちになじみのあるスープは、大きく分けると2種類。「コンソメ」タイプの透明なスープと「ポタージュ」タイプの濃くてとろりとしたスープ です。ところが、フランス料理で正式に分類すると、スープはすべて「ポタージュ」。pot(フランス語で鍋)でつくられたものという語源だからです。その「ポタージュ」は以下のように分類できます。
◎ダシをベースにつくるスープ
(仏語でブイヨン、英語ではスープストック)
- ポタージュ・クレール---澄んだスープ(日本でのコンソメ)
- ポタージュ・リエ---野菜ピュレをつなぎにして濃度をつけたもの(日本でいうポタージュ)
◎ダシをベースにしていないスープ
- ポトフやブイヤベースなど(日本では「お鍋」に近い感覚)
ブイヨンは肉と野菜を水で煮てそのエキスを取ったダシのこと。これに手を加えるとおいしく澄んだコンソメになりますが、修行を積んだ一流シェフのみがなせる技といわれるほど難しい調理です。ブイヨンをコンソメに変えるのに必要なのは、野菜、ひき肉、卵白。混ぜ合わせてどろどろの状態になったお鍋を火にかけ、かき混ぜ続けます。やがて凝固しはじめると、アクや不純物を包み込んだ綿のようなふわふわとしたものが浮かび上がってきます。ここで火を弱め、スープの透明感を保ったまま目を離さず30分間煮込み、布でこし、表面の脂肪分だけを取り除いて味付けをしたらコンソメの完成です。火力の具合やタイミング、材料の状態や気温などのいくつもの要素がぴったりマッチしなければ、透き通ったおいしいコンソメはできません。緻密な作業と完璧なプロセスによって創られる、まさに「完成」という語源にふさわしい、琥珀のように美しいスープなのです。
日本では「味噌汁を飲む」と言いますが、英語では「eat a soup(スープを食べる)」と表現します。透き通ったコンソメのようにたとえ具のないスープでも、肉と野菜のうま味と栄養がぎっしりと詰まった「食べ物」。テーブルサービスでも、食べ物として左側からテーブルに置かれます。そして、スープが食べ物であるということを表すおもしろい例が「浮き実」。もともとは彩りやアクセントではなく、スープの素材を示すために乗せていました。煮込んだり裏ごしたりするうちに材料がわからなくなるので、材料を残しておいて、「この材料を使ったスープです」という名札のように浮かべたそうです。
スープをもっとおいしくするちょっとしたコツをご紹介しましょう。 まずは「アクをこまめに取り除く」こと。「肉から溶け出した脂肪」であるアクは、加熱していると酸化し、スープの味や色をにごらせる原因となります。一度出てきたアクは分解されないので、こまめに取り除きましょう。また「野菜を煮込みすぎない」ことも大切です。タンニンやアルカロイドなどを成分とする野菜のえぐみが溶け出すと、見た目が悪いだけでなく、舌に残る風味もなんとなくざらつきます。煮込みすぎると野菜の栄養も減り、煮崩れたときには食感も楽しめなくなるでしょう。風味と栄養が詰まった野菜からアクをできるだけ出さないために、加熱のしすぎに注意してください。
一般的に和食のダシは「煮立たせない」のが基本。ところが洋風と中華風のスープのレシピには、「おいしいエキスが出るようにしっかりと煮込むこと」とあります。この違いのヒントは「香り」に隠されているようです。和食にダシを使う目的は、昆布やかつおのうま味成分によって、深い味わいとふんわり心地よい香りを加えること。えぐみや臭みが出るのを防ぐために、ぐらぐらと沸騰させないようにします。一方、洋風や中華風のスープでは、素材の奥深くに眠っているエキスを抽出するという目的があります。そして主な原材料である動物の骨や肉に含まれるゼラチン質は、ゆっくりと長時間煮出さないとおいしいスープにはなりません。素材独特の匂いを消すためには、香味野菜や香辛料を加えます。





